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次世代半導体プリカーサーとその課題

半導体製造におけるプリカーサー・ガス

半導体製造における次世代プリカーサー・ガスの複雑な課題に対処するには

著者:フランク・ホーヴァット、上級研究員、博士、スウェージロック社

人工知能(AI)は日々進化しています。それに伴って新たな需要が生まれたことで、半導体業界 では大きな変革が進んでいます。

高度なAIには、より高い演算密度、データ効率、熱管理、低消費電力が求められます。こうしたトレンドを背景に、サムスン、マイクロン、TSMCといった大手半導体メーカーを中心として、世界の半導体製造に変化が生じています。現代のAIスーパーコンピューターで求められる指数関数的成長を実現する上で、次世代デバイスには先端ロジックおよび高集積メモリが欠かせません。

これを受けて、半導体製造装置メーカー(OEM)は進化するデバイス仕様に適応した次世代装置を投入しているほか、化学薬品サプライヤーもプリカーサー化学物質や供給技術の高度化を進めています。具体的には、現在では複雑な3Dトランジスタ形状や高アスペクト比構造に原子スケール、誘電体、導電性、バリア膜が蒸着されるようになっています。

こうした複雑な形状に対して均一な成膜を形成することが、原子層蒸着(ALD)プロセスにおける新たな課題となっており、半導体メーカーはプロセス要件や化学組成の進化に対応するため、絶えず新しいプリカーサー組成を導入する必要に迫られています。本コラム記事では、高蒸気圧プリカーサーおよび低蒸気圧プリカーサー、それに関連するシステム設計上の課題、コンタミネーションや歩留まりに関する懸念、そして関係者間の緊密な連携が成功の鍵となる理由について解説します。

ALDプロセスを最適化するには

高蒸気圧および低蒸気圧プリカーサーを検討する

精密にタイミング制御されたALDバルブは、ALDプロセスで使用される成膜材料プリカーサーを各パルスごとに反応チャンバーへ正確に供給します。プリカーサーはウェハ基板と反応し、1サイクルあたり1原子層の材料を形成します。各蒸着シーケンスは通常、原料(プリカーサーA)および反応剤(プリカーサーB)の2つのプリカーサー・ステップで構成されます。各原料/反応剤パルスの間で、高真空パージまたは排気ステップにより残留ガスおよび反応副生成物を除去します。

デバイス製造の需要が高まる中、新たなレベルのパフォーマンスを実現するべく新しいプリカーサーが市場に導入されています。プリカーサーは、その挙動に応じて、一般的に 高蒸気圧プリカーサーと低蒸気圧プリカーサー とに分類されます。

半導体ALDバルブの流量係数を示す図
流量係数(Cv値)は流量能力を表す指標であり、ALDオペレーターが異なる蒸気圧条件下でバルブがどのように機能するかを評価し、その結果生じる圧力損失を推定するために使用されます。この圧力損失は、リアクターで利用可能なプリカーサー圧力に影響を及ぼします。一般的に、低蒸気圧プリカーサーではより高いCv値が求められます。
  • トリメチルアルミニウム(TMA)やジエチル亜鉛(DEZ)などの高蒸気圧プリカーサーは、室温付近で気化するため、ガス供給ラインを通じて反応チャンバーへ容易に移送することができます。
  • 一方、塩化ハフニウム(HfCl₄)、塩化タンタル(TaCl₅)、塩化モリブデン(MoCl₅)などの低蒸気圧プリカーサーを昇華させるには、150°Cを超える高温にする必要があります。通常、低蒸気圧プリカーサーは圧力が非常に低いため、蒸着サイクルごとに反応チャンバーへ移送する際は、キャリア・ガスまたはプッシュ・ガスが必要です。また、低蒸気圧プリカーサーで適切な表面被覆率を達成するには、より長いパルス時間または高いキャリア・ガス流量が求められることも少なくありません。トランジスタの小型化が進むにつれ、銅やタングステンには物理的なサイズ上の限界があることから、半導体構造内の相互接続、接点、高アスペクト比形状にモリブデンを採用する必要性が高まっています。モリブデンは、こうしたナノスケール寸法よりも実効抵抗率がはるかに低く、信頼性に優れているからです。

これらの挙動の違いは、特に大量生産環境において、バルブのパルス動作に影響を及ぼす可能性があります。 例えば、プリカーサー流量は、通常のオペレーション時に空気作動式バルブの開閉動作の影響を受けます。高蒸気圧プリカーサーの場合、通常は短いバルブ開時間(100ミリ秒未満)で十分であり、サイクル時間を短縮し、スループットを向上させることが可能です。その一方で、高蒸気圧プリカーサーはオーバーシュートやプレッシャー・スパイク(急激な圧力上昇)が発生しやすいため、精密なタイミングの同期やバルブ間の流量係数(Cv値)の一致が求められます。

高いスループットを実現するには、プリカーサーの揮発性、パルス持続時間、
バルブ・コンダクタンスのバランスを慎重に保つ必要があります。

一方、低蒸気圧プリカーサーでは、蒸気の安定性を維持させるため、より長いバルブ動作時間および厳密な温度管理が求められます。そのため、高いスループットを実現するには、プリカーサーの揮発性、パルス持続時間、バルブ・コンダクタンスのバランスを慎重に保つ必要があります。

システム設計における課題を克服する

プロセス・ウィンドウが非常に狭いALDにおいては、安定性、再現性、膜の均一性を維持するため、ALDバルブのパフォーマンスに影響を与えるシステム・パラメーターを慎重に管理する必要があります。管理が必要なシステム・パラメーターは以下の通りです:

バルブの流量および作動タイミング:

ALDプロセスは通常、高真空環境で行われ、そこで低圧プリカーサーが反応チャンバーに引き込まれます。装置メーカーがプリカーサーを移送する際に使用する重要な変数として、バルブの流量係数(Cv値)およびシステム・コンダクタンス(C)の2つが挙げられます。

Cv 値(流量係数)は、所定の差圧(dP)に対してバルブを通過可能な流量を示す流体パラメーターです。メーカーは、このパラメーターを用いてバルブを通過するガスの流量を把握し、精密なバルブ・タイミングと組み合わせることで、高精度なプリカーサーを供給することが可能になります。

半導体ALD装置で用いられるコンダクタンスの変化を示すグラフ
ALDでは、コンダクタンス(C)を用いて、プリカーサー分子がシステム内をどれだけ容易に反応チャンバーまで流れることができるかを定量化します。コンダクタンスは、ガス流量を配管の両端の差圧で割った値として定義される物理的特性です。分子流領域では、コンダクタンスは圧力に依存せず、配管の形状(直径、配管長さ、形状、表面状態)のみに影響されます。例えば、この表に示すように、流量を増やすには(配管径を大きくするなどして)コンダクタンスを大きくする必要があります。
C (システム・コンダクタンス)は、真空システムにおいて、流れ(流体分子)がシステム内をどれだけ容易に移動できるかを表す指標として用いられます。このパラメーターは、プリカーサーがバルブから反応チャンバーまで流れるのに要する時間を決定する際の鍵となるもので、大量生産(HVM)の場合に重要になります。

 

ここで大切なのが、バルブの作動タイミング性能です。数ミリ秒でもずれると、反応チャンバーに注入されるプリカーサー量およびサイクルあたりの総プリカーサー供給量が大きく変化する可能性があります。さらに、開閉遅延、バルブ応答速度、バルブ同期のばらつきも、膜均一性の低下や不完全な表面飽和といった問題につながるおそれがあります。したがって、プロセスの再現性を実現し、原子レベルの供給精度(すなわち供給量の制御)を維持するには、複数のプリカーサー・ラインにわたるCv 値の一致およびサブミリ秒単位のバルブ同期の制御が不可欠です。このようなケースでは、スウェージロックの Cv値計算ツール のようなツールが非常に便利です。


供給量の制御:

供給量の制御は、堅牢なALDプロセスにおいて、成膜性能およびウェハの歩留まりの両方を達成する上で欠かせません。ALDでは、自己制限的な表面反応を進行させるために、精密かつ再現性の高い量のプリカーサーを供給する必要があります。 ガス供給プロセスが適切に制御されている場合、1サイクルあたりの膜成長は安定し、予測可能となり、かつ表面形状に左右されにくくなります。そのため、極端なアスペクト比を持つ先進的なデバイス構造に求められる膜厚制御、被覆性、均一性を実現することができます。一方、供給量が不足すると、表面飽和が不完全となり、不均一な膜成長につながる可能性があります。逆に供給量が過剰な場合は、気相反応や望ましくないCVD的な挙動、粒子発生の増加、プリカーサー利用効率の低下を引き起こす可能性があります。

デバイスの小型化およびトランジスタ構造の複雑化が進む中、供給量のばらつきに対する許容範囲はますます厳しくなっています。バルブの流量係数(Cv値)、蒸気圧のドリフト、不安定な温度、ライン・コンダクタンス(C)の影響、不正確なタイミングなどが原因で、供給されるプリカーサー質量にわずかなばらつきが生じると、ウェハ間や製造装置間の膜厚、組成、電気特性に看過できない影響が及ぶことになります。大量生産環境では、こうしたばらつきが累積し、製造装置の一致性、プロセス移送、長期安定性に影響します。したがって、堅牢な供給制御を行うことで、ウェハ間のばらつきを低減し、チャンバー間で正確に一致させることが可能になります。

温度の均一性:

プリカーサー容器、供給ライン、バルブ全体にわたって温度を均一に維持することが、凝縮や化学物質の早期分解を防止する上で極めて重要です。加熱が不均一だった場合、局所的な蒸着につながり、バルブのパフォーマンスが低下し、結果として後続の供給時に不純物が混入する原因となりかねません。

耐食性および歩留まりの懸念:

半導体ALDシステムの設計において考慮しなければならないもうひとつの点は、材料の選定 です。次世代プリカーサーは、非適合材料に対する腐食性が非常に高い可能性があるため、システムを設計する際は、バルブなどの重要部品を調達する際に注意を払う必要があります。たとえ微細なパーティクルであっても、半導体製造プロセスに致命的な影響を及ぼす可能性があります。

たとえ微細なパーティクルであっても、半導体製造プロセスに
致命的な影響を及ぼす可能性があります。

これは、微細な構造を有し、わずかな影響でも性能が損なわれやすい現在の先端ノードにおいて、特に重要です。 こうした理由から、バルブの寿命およびシステムの稼働時間を延ばすには、早期劣化の影響を受けにくい代替材料(例えばハステロイ)製のバルブや部品がますます必要になっています。

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