クリーン・エネルギー規格ガイド
水素や天然ガスを動力源とする自動車と、それを支えるインフラへの世界的な投資が増え続けています。こうした技術が持つ可能性を最大限に引き出すには、流体システムにおいて長期にわたって低分子ガスを扱うことが可能な高性能の部品を選定し、指定することが不可欠です。しかし、アプリケーションに適した製品を見つけるにはどうすればよいでしょうか?
生産アプリケーション、仮想パイプライン、充填ステーション、車載システムには、いずれも信頼性の高いオペレーションを実現する多数の小口径流体システム部品が必要です。そこで部品一つひとつに試験を行い、信頼性の高いパフォーマンスを実証する必要があります。本サイトをご覧いただくと、部品の選定が容易になるほか、業界で実施されている試験や文書化の状況について知ることができます。さらに、スウェージロックの小口径流体システム部品の 豊富なラインアップ もご覧いただけます。スウェージロック製品は、水素や天然ガスを利用した輸送に関する最新の試験プロトコルに適合するパフォーマンスが確認されています。
クリーン・エネルギー規格について
クリーン・エネルギーを使用した輸送に関しては、唯一となる国際規格はないものの、業界において大きな影響力を持つ規格が存在します。広く普及している規格としては、以下が挙げられます。
水素に関する規格
- ECE R134:国連欧州経済委員会(UN/ECE)が定める本規格は、水素燃料自動車の安全性能に関する自動車およびその部品の承認に関する統一規定を定めています。本規格には、圧縮水素ガスを動力源とする自動車(燃料電池自動車および内燃エンジン自動車を含む)の仕様が含まれます。
- HGV 3.1:本規格は、燃料電池車の燃料システム部品に関する要件を定めており、供給圧力が25 MPa、35 MPa、50 MPa、70 MPaの装置に適用されます。当該部品の圧力封止、パフォーマンス、安全特性について規定しています。
- HGV 4.1:本規格は、水素ステーションを新たに製造する際の安全なオペレーション、頑丈で耐久性のある構造、機械的/電気的機能の性能試験に関する要件を定めています。本規格は、規定を超える可能性のある製品についても適合できるように定められています。
- ISO 12619-1:2014:本規格は、圧縮水素ガス/天然ガス混合燃料に関する一般要件および定義を定めているほか、一般的な設計原則を示すと共に、指示やマーキングに関する要件を規定しています。なお、液化水素燃料システム部品、燃料容器、定置式ガス・エンジン、コンテナ取り付け用ハードウェア、電子燃料管理、充填レセプタクルには適用されません。
- ASME B31.3:本規格(プロセス配管コード)は、さまざまな産業で使用される配管システムの設計や構造における安全性および信頼性に重点を置いており、材質、溶接、ろう付け、熱処理、成形、試験、検査、調査、オペレーション、メンテナンスなどの分野をカバーしています。
- ASME B31.12:本規格(水素配管およびパイプライン規格)は、水素の可燃性および漏れの可能性に関連するリスクの軽減に重点を置いており、ASME B31.34では重視されていない特別な安全対策およびプロトコルを規定しています。本規格は、水素ガスおよび水素混合ガスを扱う配管およびパイプラインのほか、液体水素用の配管にも適用されます。
- ASME B16.34:本規格は、新規建設用バルブに関し、フランジ・エンド、ねじエンド、溶接エンドを対象としています。フランジ間、またはフランジに取り付ける鋳造バルブや鍛造バルブおよび加工バルブの各温度における最高使用圧力、寸法、公差、材質、非破壊検査要件、試験、マーキングをカバーしています。
- EC79 (1) :本規格は、水素を動力源とする自動車の型式認証に関する統一規定を定めており、乗客および貨物の輸送に使用される水素自動車とその部品およびシステムの製造要件を規定しています。水素を動力源とする自動車の設計、構造、パフォーマンスに関する基準を定めることで、その安全性および信頼性を確保することを目的としています。
(1) 2022年7月5日付けで、欧州連合はEC-79/2009規制を撤廃しましたが、これまでに取得したEC-79認証については引き続き有効です。スウェージロックは、EC-79認証に準拠した試験を行った製品(認証レター付き)を提供しています。
圧縮天然ガス(CNG)に関する規格
- ECE R110:UN/ECEが定める本規格は、CNGを使用する自動車の特定部品の承認に関する統一規定を定めると共に、当該部品の自動車への取り付けについても規定しています。CNGを動力源とする自動車の安全性および信頼性を確保することを目的とし、その設計、構造、パフォーマンスに関する基準を定めています。
- NGV 3.1:本規格は、CNG車の燃料システム部品に関する要件を定めており、供給圧力が16,500 kPa、20,700 kPa、24,800 kPaの装置に適用されます。当該部品の圧力封止、パフォーマンス、安全特性について規定しています。
- NGV 4.1:本規格は、天然ガス自動車の供給システムに関する要件を定めており、新たに製造する際の機械的/電気的特性を対象としています。供給システムが自動車の燃料貯蔵容器にメタンを直接供給することを主な目的としていることを保証します。
- ISO 15500-1:2015:本規格は、自動車用のCNG燃料システム部品に関する一般要件および定義を定めているほか、一般的な設計原則を示すと共に、指示やマーキングに関する要件を規定しています。ISO 15403-1に準拠して天然ガスを使用する自動車に適用されます。なお、LNG燃料システム部品、燃料容器、定置式ガス・エンジン、コンテナ取り付け用ハードウェア、電子燃料管理、充填レセプタクルには適用されません。
- ASME B31.3:本規格(プロセス配管コード)は、さまざまな産業で使用される配管システムの設計や構造における安全性および信頼性に重点を置いており、材質、溶接、ろう付け、熱処理、成形、試験、検査、調査、オペレーション、メンテナンスなどの分野をカバーしています。
エンジニアやシステム設計者にとって重要なのは、必ずしも認証そのものではなく、規格試験プロトコルに準拠した試験が第三者機関によって実施されたかどうかです。独立機関による試験を受けた部品は、認証を取得した部品と同程度(またはそれ以上)のパフォーマンスを発揮することが実証されています。
また、業界における広範な使用実績がサプライヤーにより証明されている部品についても、認証を取得した部品と同様に使用することができます。つまり、エンジニアやシステム設計者の方々においては、部品を指定する際に、試験証明書および/または業界における広範な使用実績の有無を確認することをお勧めします。
流体システム部品の試験は、さまざまなパフォーマンス基準(腐食試験、破裂試験、水圧試験、振動試験、圧力試験など)に基づいて行われます。スウェージロックは、以下のような資料を提供可能です:
国際認証/リスティング:国際認証機関を通じて取得する認証で、継続的なモニタリングを伴います。こうした認証によって、組織の再生可能エネルギー・ソリューションへの移行や、業界における専門家の差別化を実現することができます。
第三者機関によるテスト・レポート:米国環境保護庁(EPA)などの規制当局に承認された第三者機関によって作成されたレポートで、製品が所定の基準を満たしていることを保証する評価試験結果を提示します。本プロセスでは、選定した試験対象製品を入手し、第三者機関で試験を実施します。その後、規制当局に結果が報告され、不合格製品は失格手続きに従って処理されます。
認証レター:特定の規格、規制、契約上の義務への準拠を証明する公式文書です。この文書は、産業規格、環境規制への準拠、契約上の義務の順守など、さまざまな状況に対応します。認証レターには複数の規格に準拠した試験が含まれる場合があります。
技術レター:特定の要件(ASME B31.3など)一式を満たすためのスウェージロックによるアプローチを示したレターです。ご要望に応じて指定販売会社からお送りします。
宣言/適合宣言:認証レターまたは第三者によるテスト・レポート付きの製品は、公的な国際認証を取得した製品と同等のパフォーマンスが期待できるため、車載またはディスペンサー・アプリケーション用として指定することが可能です。
圧力クラスについて
クリーン・エネルギーを使用した輸送アプリケーションでは、ガスを高圧で貯蔵・移送することで、エネルギー密度を最大限に高めています。天然ガスは、24.8 MPaで貯蔵されます。ただし、水素には以下の圧力クラスがあります:
35.0 MPa
一般的に、航続距離が短い自動車(乗用車など)に使用される部品は、この圧力クラスに分類されます。35.0 MPaは公称使用圧力です。製品の試験は、車載アプリケーションの最高使用圧力である43.8 MPaに相当する定格圧力で行われます。
70.0 MPa
一般的に、航続距離が長く高いエネルギー密度を必要とする自動車(トラックやバスなど)に使用される部品は、この圧力クラスに分類されます。70.0 MPaは公称使用圧力です。製品の試験は、車載アプリケーションの最高使用圧力である87.5 MPaに相当する定格圧力で行われます。
前述の関連規格および認証では、両方の圧力クラスについてのパフォーマンスしきい値が定められています。例えば、35.0 MPaのクラスでは必要な試験パフォーマンスが文書化されていても、70.0 MPaのクラスではあてはまらない場合があります。アプリケーションのニーズに応じて、それぞれのクラスに必要な試験データを部品サプライヤーから必ず入手してください。