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燃料電池向けの水素純度を確保する

ノズル部(燃料供給口)でのサンプリングは、プロトン交換膜(PEM)燃料電池の水素純度を確保する上で極めて重要です

規格に準拠した信頼性の高い水素システムにおいてノズル部(燃料供給口)でのサンプリングが重要な理由

世界のエネルギー情勢がよりクリーンかつ持続可能なソリューションに移行する中、輸送、産業、発電の脱炭素化を進める上で水素は極めて重要な燃料となっています。

水素の有望なアプリケーションとして、プロトン交換膜(PEM)燃料電池への利用が挙げられます。PEM燃料電池を使用することで、自動車や定置システムの高効率化およびゼロ・エミッション化を実現することができます。しかし、燃料電池のパフォーマンス、安全性、寿命は供給される水素の純度によって大きく変わります。よって、その要件の厳しさは、他の産業用途をはるかに上回っています。ほんのわずかでもコンタミネーションが存在すると、取り返しのつかない損傷、オペレーション効率の低下、システムの信頼性低下につながる可能性があります。

サウハイブ・フィラリ氏、アプリケーション・エンジニア、スウェージロック・ミュンヘン
サウハイブ・フィラリ氏、アプリケーション・エンジニア、スウェージロック・ミュンヘン

水素純度の確保が重要なのは、実験室での分析にとどまりません。生産から貯蔵、移送、充填に至るまで、バリュー・チェーン全体にわたる包括的なアプローチが求められます。各段階において水素は劣化やコンタミネーションのリスクにさらされているため、堅牢なサンプリング手順および評価手順が欠かせません。

こうした状況を受けて、スウェージロック・ミュンヘンのアプリケーション・エンジニアであり、クリーン・エネルギー市場を専門とするサウハイブ・フィラリ氏は、水素インフラおよび燃料電池の導入に携わるエンジニア、オペレーター、関係者に向けた技術ガイドとして、ホワイト・ペーパーを執筆しました。このホワイト・ペーパーでは、水素サンプリングの原理および工学的課題について解説すると共に関連規格をおさらいし、正確かつ規格に準拠した燃料品質の検証をサポートする実用的なシステム構成例を提示しています。

ホワイト・ペーパー(英語版)を読む

以下のQ&Aセッションでは、サウハイブ・フィラリ氏が市場の動向、本ホワイト・ペーパーを執筆した背景、そしてそれがお客さまにどのように役立つのかについて語っています。

Q: ご自身の経歴と、この業界で働くことになった経緯を教えてください。

A: 私はモロッコのハッサン2世大学カサブランカ校のフランス語による工学プログラムにおいて、機械工学の学士号を取得しました。その後、技術的専門性をさらに高めて国際的な工学分野でのキャリアを築きたいと考え、ドイツに渡りました。ベルリンの応用科学大学にて、ドイツ語で実施されるカリキュラムの下、2つ目となる機械工学の学士号を取得しました。

2022年に入社したスウェージロック・ミュンヘンでは現在、水素の製造、流通、貯蔵、サンプリング、車載アプリケーションといったクリーン・エネルギーのバリュー・チェーン全体にわたって、水素流体システムの設計、文書化、実装を支援しています。業務内容は、プロセス・エンジニアリング、P&IDの作成、部品仕様の策定、3Dシステム・モデルおよび組み立て図の作成、さらにお客さまの現場での技術サポートなど多岐にわたります。

また、安全かつ規格に準拠したシステム設計を実現するため、システムおよび部品が国際的な水素関連規制に適合しているかどうかの評価も行っています。さらに、ハノーバー・メッセやTankTechといった業界イベントにおいて、水素システム設計のベスト・プラクティス、水素燃料の品質、サンプリング、安全規格に関する講演も定期的に行っています。

Q: 今後の水素市場についてどのように見ていますか?

A: アプリケーション・エンジニアとして、世界の水素市場が急速に進化していく様子を目の当たりにしてきました。大胆な政治的構想や初期段階の実証実験から、より体系化され、規格に基づいた導入段階へと移行しています。電解槽の容量は飛躍的に大きくなり、燃料電池モビリティはアジアおよびヨーロッパで着実に広がりつつあります。

特に、拘束力のあるインフラ目標を盛り込んだ欧州のアプローチには非常に感銘を受けました。例えば、欧州連合(EU)の代替燃料インフラ 規制 (AFIR)は、2030年までに主要輸送ルートにおいて200 kmごとに水素ステーションを配置するよう義務付けています。

とはいえ、市場は依然として現実的な課題に直面しています。その最大の課題のひとつが、導入と信頼性との間に存在する格差です。システムを構築する際に、燃料品質や長期的な耐久性への一貫した配慮が十分になされていないというケースも少なくありません。水素燃料電池は、微量レベルのコンタミネーションであっても影響を受けるにも関わらず、つい最近まで品質保証は軽視されがちでした。

現在、業界がこの課題に本格的に取り組み始めていることを心強く感じています。ISO 19880-9などの新たな規格によって、ディスペンサーでの水素サンプリングに関する明確な指針が示されたことで、車両に供給される水素が重要な純度仕様を満たしていることを担保することが可能になりました。こうした変化が、水素経済を拡張可能かつ長期的な成功へと導いていくものと楽観視しています。

Q: どのような業界状況がきっかけでこのホワイト・ペーパーを執筆されたのですか?

A: PEM燃料電池スタック用の水素燃料に求められる品質要件と、それを保護する上でのサンプリングの役割について、業界の理解には大きな格差があると感じています。水素燃料には99.97%以上の純度が求められます。つまりごく微量のコンタミネーションでも許容することはできません。しかし、充填時にそのレベルの純度をいかに達成すべきかについて十分に理解されているお客さまはそれほど多くありませんでした。そのため現在でも、圧縮、貯蔵、充填の各工程で水素の品質が低下する可能性があると気付かないまま、サプライヤーが発行する分析証明書をうのみにしているケースも少なくありません。

サンプリングは、使用時点で水素が要求される仕様を満たしていることを検証する上で重要な手法です。しかしサンプリングのプロセスは複雑であり、適切に行っていなかった場合、不正確な測定結果や規格不適合、さらにはシステムの長期的な損傷につながるおそれがあります。

Q: 知っておくべき重要な水素規格にはどのようなものがありますか?

A: そうした水素規格はいくつかありますね。燃料電池システムを扱うすべてのお客さまには、安全かつ信頼性の高いオペレーション向けに水素の品質を確保する上で、ぜひ知っておいて欲しいと思います。それでは、相互に連携する必要がある3つの重要な要素、すなわち何を測定するのか、いかにサンプルを採取するのか、そしていかに分析するのか という観点から説明しましょう。

第1のレベルでは、ISO 14687(および一部の地域ではSAE J2719)によって水素燃料の品質要件を定めており、重要不純物の最大許容限界などが規定されています。第2のレベルでは、ISO 19880-9やASTM D7606-17などの規格によって、ディスペンサーにおける水素サンプルの適切なサンプリング方法を規定しており、パージやアース、材質の適合性などを含む要件が示されています。第3のレベルは分析に関するもので、ISO 21087では、実験室で使用すべき分析手法や、輸送中にサンプルを安定した状態に保つ方法について概説されています。

重要なのは、これら3つのレベルが一致している必要があるということです。技術的に適切なシステムであっても、サンプリングが適切な規格に準拠していなければ、純度の測定結果は信頼できない可能性があります。

Q: 水素サンプリングにおける最大の技術的課題は何ですか?

A: 私の経験から言えば、サンプルの整合性を維持することです。つまり、抽出から分析に至るまで、サンプルが実際の水素組成を正確に反映している必要があります。一見すると単純な話に思えますが、わずかな漏れがある、たまり部にガスが残留している、あるいはパージが不十分であるといったことで、コンタミネーションの発生や不純物による水素の純度低下につながる可能性があります。その結果、水素ラインから採取したサンプルは、実際の組成を正確に表さなくなるおそれがあります。

これを防ぐには、サンプリング・システムを適切に設計すると共に、適合性のある材質を選定し、デッド・ボリュームを排除し、パージを十分に行うことが必要です。そうして初めて、分析器に到達する水素が、元の水素ラインの組成と正しく一致しているという確証が得られるのです。

システムの清浄度は、サンプリング・プロセスの清浄度に直結します。たとえ水素が高純度であっても、サンプリング方法の設計や実施が適切でなかった場合、コンタミネーションが生じたり、プロセス流体の状態を正しく表すサンプルが得られなかったりして、分析結果が無効になるおそれがあります。

そのため、サンプリング・システムの設計 は、水素燃料システムの他の部分と同様に十分な注意を払い、国際規格に準拠して行う必要があります。実際には、サンプリングは単なる分析手法ではなく、燃料電池のパフォーマンスや安全性に直接影響するシステム・レベルの重要な判断であるといえます。

Q: このホワイト・ペーパーの内容をひとつだけ覚えておいて欲しいとしたら何ですか?

A: ひとつだけ覚えていただきたい点を挙げるとすれば、ノズル部(燃料供給口)での燃料品質が重要だということです。たとえ水素が製造プラントから十分な高純度で出荷されたとしても、水素バリュー・チェーン内でコンタミネーションが生じる可能性があります。そのため、ノズル部で直接試験を行い、燃料電池に必要な仕様通りの燃料が供給されていることを確認する必要があります。


「水素サンプリングは、単なる二次的な検討事項ではありません。燃料電池を保護する上で重要な役割を担っているのです」
- サウハイブ・フィラリ氏、スウェージロック・ミュンヘン

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サウハイブ・フィラリ氏が執筆したホワイト・ペーパー『燃料電池用途における水素純度の確保』をぜひお読みください。水素サンプリングに関するご質問は、最寄りの スウェージロック指定販売会社 までお問い合わせください。

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