alert icon

Internet Explorer 8および9は、本ウェブサイトの動作確認環境の対象外となります。 その他のブラウザを使用してください。

メッセージを閉じる hide icon

サンプリング・システムの改善が進まなかった3つの理由

試料採取システム

サンプリング・システムの改善が進まなかった3つの理由

Mike Frost

この数十年間で、プロセス分析器の信頼性は一層高まっています。その一方で、サンプリング・システムには大きな進歩が見られなかったと言わざるを得ません。 「①汚染されていない、②プロセスの状態を正しく表している、③分析器に適合する、という3つの条件を満たすサンプルを、過度の時間遅れなしに供給する」という本来の目的を、プロセス分析サンプリング・システムの大半が果たせていないというのが現状です。

分析器による測定値が不正確だと、仕様を外れた不良品が発生することになり、やがて分析器はオペレーターの信頼を失っていきます。 また、サンプリング・システムが適切に設計されていないと、安全上の問題が生じるリスクが高まり、プラントの効率性が低下することにもなりかねません。

この悪循環は何が原因なのでしょうか? 複雑に絡み合う原因を整理してみると、次の3つの問題が見えてきます:

  1. トレーニングや学習の機会がない
  2. システムの全体像がつかめていない
  3. 承認外や文書化されていない変更、および/またはその場しのぎの変更がサンプリング・システムに加えられている

1. サンプリング・システムのトレーニングや学習の機会がない

一般的に、大学のカリキュラムにはシステム設計全般に関するプログラムはあっても、サンプリング・システム・エンジニアリング専門のコースは存在しません。 また、現場で経験を積みながら学習する機会もほとんどありませんし、すべてのエンジニアや技術者がトレーニングを受講する時間を確保できるわけでもありません。

こうした状況を受けて、多くの大手企業がサンプリング・システムのエンジニアリング担当スタッフを削減し、システム設計・製造専門の外部業者に業務を委託してきました。 しかしこのような業者でも、急増する需要に対応可能な数の優秀なスタッフを常に確保しているとは限りません。 そこで生まれたスキル格差が、サンプリング・システムの質にまで影響することになります。

経験が浅い設計エンジニアによるエラーが、レビューのプロセスで見過ごされてしまうケースも少なくありません。これは単に、システムに関する知識がレビュー担当のエンジニアに不足していることが原因と考えられます。 その後システムに不具合が発生しても、現場で対応を強いられるのはオペレーターということになります。システム設計者が失敗から学ぶ機会は、永遠に訪れることはないのです。

サンプリング・システム設計に関する知識格差を解消するには、エンジニア、インテグレーター、技術者などサンプリング業務に携わるメンバー全員が適切な トレーニング・プログラム を受講し、サンプリング・システムとそのサブシステムの複雑性と基本的な設計原理を理解する必要があります。

2. システムの全体像がつかめていない

プロセス分析器は、サンプリング・システム、環境、プロセスといった要素が複雑に絡み合ったシステムの一部にすぎません。 しかし、サンプリング・システムは単なる追加モジュールで、誰でも容易に上記のような複合システムに組み込めると考えられていることも珍しくないのです。 ただ、プロセス分析器を実際に取り付けようとすると、想像以上に難しい作業であることがわかります。

プロセスの取出し口のシステムは、中継ラインを使ってサンプリング・システムのエンクロージャーに接続されることになります。 測定対象のサンプルは、容器、チューブ、装置を流れても、分析に適した状態のままであることが求められます。 気象条件や、サンプリング・システム内のプロセスによっては、温度管理が問題になる場合もあります。 こういったシステムを一定時間内で、かつ変質させることなく、サンプルを流す必要があります。 この過程で生じたエラーひとつで、システム全体が停止に追い込まれることにもなりかねません。そうなると精度が低く、何の役にも立たない分析結果しか得られないことになります。 また、分析結果は一見しただけでは正しいか否かの判断がつかないかもしれません。

このように、サンプリング・システムの設計にばかり注目していると、システムのその他の部分でミスが発生する可能性は大きく高まります。 正確な分析結果を得るには、プロセス分析システムのエンジニアが、サンプリングの取出し口、プローブ、中継ラインの場所と設計はもちろん、プロセスそのものも含めて、システム内のあらゆる構成要素を評価することが必要です。 適切なトレーニングを受講することで、問題が発生しているエリアを特定し、対策を講じるスキルを養いましょう。six-goals-sampling-excellence-chart

3. 承認外の変更が加えられている

設計に問題があるサンプリング・システムでも、最初の性能試験や完成検査をクリアすることもあります。 そうなると、欠陥が明らかになるのは、施設全体がフル稼働する、制御ループが繋がる、あるいはラボでの分析が可能になった時点ということも十分に考えられます。 問題が発覚した場合はサンプリング・システムの設計に変更を加える必要がありますが、システム設計に対する場当たり的な変更を禁じる変更管理(MOC)手順が導入されている施設が大半を占めています。

しかし、管理責任者がメンテナンス技術者に早急な修正を指示するケースも少なからずあるのではないでしょうか。 これを受けた技術者は、根本的な問題解決ではなく、とりあえず目の前の不具合を解消するべく、サンプリング・システムに変更を加える可能性もあります。 しかし、そのサンプリング・システムがこれまで正常に稼働していなかったとすると、承認外の変更を加えることで、新たな問題が生じることも考えられます。

施設ではMOCを徹底し、システム変更が必要な場合はサンプリング・システム設計者の責任において行うことで、適切なオペレーションの維持に努めましょう。 さらに、担当技術者にもこの変更プロセスに加わってもらうことで、彼ら自身も経験から学ぶことができます。

サンプリング・システムの改善に向けた取り組みを

施設のサンプリング・システムの改善に向け、以下の項目を実行することをお勧めします:

  • 学習やトレーニングを通じて、サンプリング・システムの設計に関する基本原理と基礎をきちんと理解する
  • サンプリング・システムの専門家にコンサルティングを依頼し、既存システムの調査とトラブルシューティングを実施する
  • 新たに取り付けたサンプリング・システムの不具合や信頼性低下が見られた場合は、サンプリング・システム設計者の責任において対処する

今回紹介した手順を実施することで、サンプリング・システムの精度低下や安全に関する懸念を払拭し、プラントの効率性と製品の質向上につなげることができます。 現在の施設におけるサンプリング・システムの適切な運用と品質向上をいち早く実現したい方は、スウェージロックが提供しているサンプリング・システム・トレーニングの受講をご検討ください。スウェージロックの業界エキスパートが講師を務めるコースを、さまざまな経験レベルと業界に応じてお選びいただけます。

サンプリング・システム・トレーニングについて問い合わせる

関連コラム

試料採取システム

プロセス分析サンプリング・システムによく見られる課題

流体システムの専門家Tony WatersとPhil Harrisの両氏が、長年にわたる経験を基に、プロセス・サンプリング・システムによく見られる課題について解説します。 サンプリング・システムで繰り返し発生する問題の解決にお役立てください。

流体システム・コンポーネント

一般産業用流体システム・コンポーネントの寿命を最長化する

一般産業用流体システム・コンポーネントを1つ交換するのに必要なコストが、コンポーネント自体の価格を上回ることもあります。 今回は、システムのコストを抑えつつコンポーネントの寿命を最長化するための予防保全のヒントを紹介します。

プロセス分析システム内のゲージ

プロセス分析システムに共通する5つの発見-50年以上の現地経験をベースとしたトレーニングから

サンプリング・システムは、設計・運用の両面において、プラント内で一番厄介な存在と言えるかもしれません。 一般産業向けアプリケーションの分野におけるトレーニング講師として50年以上の経験を持つTony Waters氏が、同氏のトレーニングから受講者が得た「気づき」を紹介します。