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プロセス分析システムに共通する5つの発見-50年以上の現地経験をベースとしたトレーニングから

プロセス分析システム内のゲージ

プロセス分析システムに共通する5つの発見-50年以上の現地経験をベースとしたトレーニングから

Tony Waters、サンプリング・システム専門家、講師

プロセス分析サンプリング・システムは、プラント内で一番厄介な存在であると言っても過言ではないでしょう。 設計もさることながら、正確な運用も容易ではありません。 微調整をわずか1カ所に加えただけなのに、他で大がかりな変更が必要になってしまうケースもあります。 というわけで、私が担当しているスウェージロックの プロセス分析サンプリング・システム(PASS)・トレーニング で、受講者から鋭い質問が寄せられるのも当然でしょう。私は、50年以上にわたってトレーニングを実施してきた中で、受講者がひらめきを得る瞬間に何度も遭遇してきました。 その中から、プロセス分析システムのトレーニング受講者が得た「気づき」のトップ5を紹介しましょう:

「時間遅れは想定よりも長引くことが多い」

分析計装システムの時間遅れを軽視した結果、分析器の測定時間が長引くことに驚く受講者は少なくありません。 サンプルの採取から測定値の取得までに要するレスポンス・タイム(応答時間)は、約1分が業界標準とされています。 これを実現できれば、プロセスの状態をほぼリアルタイムで読み取ってすぐに調整することができるため、流体の浪費を最小限に抑えることができます。

ただし、場合によっては測定値の読み取りに時間を要することがあります。これは、プロセスの取出し口のすぐ近くに分析器を設置していたとしても例外ではありません。 この時間遅れがサンプリング・システム設計者の想定を上回ると非常に厄介です。 時間遅れの推定が不正確だったり、仮説が間違っていたりすると、プロセスを適切に管理することができなくなります。

時間遅れを短縮するには、システム設計を見直すしかありません。 スウェージロックの  プロセス分析システム・トレーニング では、実技演習を取り入れています。 この演習で一般的なサンプリング・システムの時間遅れを計算したところ、初期設計では5時間以上というかなり長い遅れだったものの、簡単な修正をシステムに加えた結果、業界標準の1分にまで時間遅れを短縮できました。 この結果にはトレーニング受講者も驚嘆し、各自の施設に戻って同様の修正を実施しています。

「サンプルがプロセスの状態を代表していない可能性がある」

時間遅れを看過すべきでない理由は、遅れが発生することで、サンプルの測定値の「代表性」が影響を受けるためです。 「代表性」とは、分析器の測定値を取得した際のサンプルが、プロセス・ラインの流体の見本としてどれほど適しているかという意味です。 例えば、プロセス分析システムで5時間以上の遅れが発生し、望ましくない測定値が出た場合、品質の問題さえクリアすればすべて解決できると思い込んでいるシステム・オペレーターもいます。 しかし、読み取りで5時間以上もの遅れが発生したという事実に、このオペレーターが気づく可能性は低いのではないでしょうか。 この時間遅れの間に劣化した流体が大量にシステムを通過し、すでに出荷されてしまっているおそれもあります。

適切なサンプルを取得し、時間遅れを短縮したとしても、サンプリング・システムの設計ミスが原因で代表性が失われることもあります。 例えば、プロセス分析システムのたまり部やデッド・スペースに残っていた古いサンプルが、新しいサンプルと混じり合うと、リアルタイムのプロセス状態を正確に反映していないサンプルが生成されるおそれがあります。

サンプリングシステムのデッドレッグ漏れに伴って、サンプルのコンタミネーションが生じる場合もあります。この場合の漏れとは、サンプリング・システム自体の漏れではなく、周囲の外気からシステムへ流入する漏れを指します。 例えば、100 psiaの圧力で窒素を100パーセント格納するシステムに、外部から酸素が流入することがあります。これは、システム外の酸素の分圧が、システム内の窒素の分圧よりも高いためです。 こうしたタイプの漏れを解消するには、サンプリング・システムの分圧を上昇させて外気のコンタミネーションを防止しましょう。

「コアレッサにはもっと注意を払うべきである」

サンプリング・システムのトレーニングでは、コアレッサを使用する目的はガス・サンプルから液体を分離・除去することであると考えている受講者が少なくありません。 これはあながち間違いとは言い切れません。微細な液滴が浮遊するエアロゾル状態の場合は、これは正しいと言えます。 ガス・サンプルには、大抵の場合エアロゾルが存在していますが、サイクロンなどの加速装置や重力分離装置では、液滴を分離することができないためです。 コアレッサをサンプリング・システムに取り付け、微細な液滴を集めて大きな滴に結合させると、重力で容易に分離することができます。

プロセス分析システムのコアレッサートレーニング受講者が愕然とするのは、ある2つの条件によってコアレッサが機能しなくなることです。 1つは霧状(エアロゾル)でない場合です。液体が多い場合、液滴のサイズが非常に大きいため、ほぼ分離されない状態でコアレッサを通過します。 2つめは、コアレッサを通過する流れが速すぎると、エアロゾル状の微細な液滴がコアレッサのエレメントを通過してしまうため、除去することができません。 いずれのケースでも、エアロゾル状の液滴が分析器まで到達した結果、測定値の信頼性が低下するおそれがあります。つまり、コアレッサは無用の長物になってしまうのです。

「液体の気化で問題が生じる場合がある」

液体サンプルは容易に気化できると考えているトレーニング受講者は少なくありません。しかし現実はそれほど容易ではありません。 気化とは、液体の圧力を素早く下げて瞬時に蒸気状態にすることです。 しかし、すべてのサンプルを気化することができず、気化と蒸発の両方が生じた結果、期せずしてサンプルが分留してしまう場合があります。 分留したサンプルは、もはや分析に使用することはできません。

こうしたケースでは、軽いガス分子が最初に蒸発して二次側の分析器に移動する一方で、重い分子は液体相に留まります。 その結果、分析器に到達するサンプルは、プロセス・ラインから採取した流体とは異なっています。 気化時に何が発生しているかを把握し、分析システムの気化に対処する方法を学ぶことで、このような現象を回避することができます。

「結露は厄介だが、容易に解決できる」

結露は、ガス・サンプルで最もありふれた問題と言えます。 トレーニング受講者は、ガスの冷却スピードの速さ(と、液体の冷却スピードの遅さ)に驚きますが、実は結露が発生するタイミングや、結露の防止に必要な温度は容易に予測することができます。

フィールド・ステーションにおけるガス・サンプルの圧力を下げるシステムを考えてみましょう。フィールド・ステーションは、できるだけ取出し口の近くに設置するものとします。 ここで、ほぼすべてのガスは、圧力損失に伴って温度が下がること(「ジュール・トムソン効果」)を忘れないでください。 このとき、圧力降下がわずかであれば、シンプルな減圧レギュレーターで十分ですし、結露も心配ありません。 しかしガス圧力が大幅に降下すると熱損失が大きくなるため、結露が発生します。 ガスが露点温度に近くなると、この可能性はさらに高まります。

プロセス分析サンプリング・システムの設計は、いわば終わりの無い発見の旅です。 いつも何かしら新しい課題が見つかります。 サンプリング・システムに50年関わっている私も日々学ぶことがありますし、いまだに気づきを得ることもあります。 現在のスキルを高め、さらに学ぶべきことを発見するためにも、トレーニングは非常に重要です。 すでに現場経験が豊富な方でも、トレーニングから何らかの気づきを得られるはずですし、それをプロセス分析システムにおける測定値の精度や信頼性の向上に活かすことができるでしょう。

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tony waters筆者紹介

<p;>業界エキスパートのトニー・ウォータース氏は、スウェージロックのコンサルタントを務めています。 ウォータース氏はプロセス分析器やサンプリング・システムに関して50年を超える経験を有しています。 ウォータース氏はこれまでに3つの会社を立ち上げ、プロセス業界に対して分析器に特化したサービスを提供しています。 また、精製所や化学工場におけるプロセス分析器のアプリケーションのエキスパートでもあります。</p;>

 

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