流体システムが半導体ファブのコストにもたらす影響とは

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半導体ファブの新規建設において、高性能な流体システムが重要な理由

Masroor Malik、半導体担当主任ソリューション・スペシャリスト

半導体製造施設（ファブ）を新たに建設する際は、市場投入までのスピード、材料や取り付けの標準化、半導体ファブの総コストなど、さまざまなことを考慮する必要があります。ファブの新規建設コストの見積額は、50億ドルを上回ることも珍しくありません。最先端の半導体ファブ（3 nm以下）では200億ドルを超える建設費がかかることも多く、あらゆるシステムを最適化しなければならないという重圧がかつてないほど強まっています。

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こうした費用の大部分を占めるのはクリーンルームや高価なマイクロチップ製造装置ですが、施設全体に設置されるその他のシステムや装置によって、総所有コストは大きく変動することもあります。

半導体製造における流体システム

その一例として挙げられるのが流体管理システムです。同システムは、施設全体にわたって必要な液体やガスを移送するという、半導体ファブの循環システムに欠かせない機能を担っています。半導体ファブの新規建設に着手する際は、高品質な流体システム部品や組み立て品を指定し、開発の基本設計（front-end engineering and design; FEED）段階から流体システムのサプライヤーと緊密に提携することで、ファブの短期的および長期的な収益性が得られる機会が高まります。

半導体ファブにおいて流体システムに臨むには

今回は、流体システムの設計や取り付けを慎重に行い、半導体ファブの収益性を高める方法を5つ紹介します。

#1. 漏れの無い取り付けを迅速に行う

ファブ建造物を新たに建設すると、一般的に新しい製造技術の導入や生産能力の拡大につながることから、市場投入の迅速化を最優先の目標に掲げることで、競争優位を維持することができます。半導体の製造や生産に求められているのは、できるだけ早急に開始することです。そのため、補助的な施設の完成を待たずに稼働を始めることも珍しくありません。

要するに、一刻の猶予もありません。しかし、複雑な流体システムを設計して構築し、ファブ全体に配置するには時間がかかります。つまり、重要な部品を正しく取り付け、システムの整合性を確保するには、かなりの労力や専門知識を要するのです。このプロセスは、信頼性が高く漏れの無いシステムを構築するための知識が請負業者や施工者に不足しており、さらにトレーニングを受ける機会も十分無かった場合、特に困難になるおそれがあります。

世界各地で建設業の人手不足が続いていますが、カスタム設計を行ったプレハブ式の流体システム組み立て品を活用することで、建設中に取り付け上の問題が生じることなく、複雑なサブシステムを組み立てるのに必要な労力を大幅に削減することができます。まずはシステムのニーズを理解し、取り付けが容易な組み立て品を高品質の部品で製作して提供することが可能なサプライヤーを探しましょう。時間を節約できれば、ファブの本格稼働時期が早まり、フルスケールの半導体製造を開始することができます。

#2. 効率的な計画および設計を行う

半導体ファブの流体システムは、チューブ継手、バルブ、レギュレーター、ホースやチューブといったさまざまな部品で構成されています。適切なシステム計画、効率的な設計、効果的なチューブのレイアウトをはじめとする施工上のベスト・プラクティスを取り入れることで、システムを迅速に稼働させ、施設の耐用期間にわたって信頼性の高いパフォーマンスを実現することができます。

バッチ式装置やガス供給スキッドの複雑化に伴い、サブシステムで複雑なチューブの方向変更が必要な場合、社内の設計者や施工者で対処するのは難しいケースもあるでしょう。完全なサブアセンブリーを提供してくれるサプライヤーと提携すれば、チューブの曲げ加工を委託できるため、ここでも大きなメリットが得られます。納品後すぐに、漏れの無い完全なサブシステムを取り付けることが可能というわけです。

また、効率的に設計された流体システムでは、チューブの曲げ加工を多数採用しています。チューブを曲げることで、使用する継手を減らせることになります。不必要な接続部を減らせば、半導体ファブ建設時の部品コストを削減することができるばかりか、漏れが生じる可能性がある接続部を排除することにもつながります。高品質な流体システム部品を指定し、必要に応じて流体システムの設計やサービスを専門とする業者のサポートを受けることで、建設中の短期コストはもちろん、施設の耐用期間にわたる総所有コストも抑えることができます。

#3. 総ライフサイクル・コストを削減する

半導体ファブが稼働すると、稼働効率およびスループットの最大化が焦点となります。特にAI、自動車、HPC分野向けの製品を製造しているファブでは、流体システムの不具合によりダウンタイム（停止時間）が生じると、1時間当たり数百万ドルもの生産損失を被ることになりかねません。プロセスの立ち上げにあたって高品質な部品や組み立て品を調達することで、施設の耐用期間にわたって、メンテナンス、修理、オペレーション（MRO）を行う必要がなくなります。

例えば、熱安定性の重要性はますます高まっています。特に温度やガス供給を厳密に制御する必要がある新材料においては、これまで以上に重要になっています。しかし、冷却液を移送するホースに適切な断熱材が取り付けられていなかった場合、製造装置チャンバー内の温度が変動し、生産量の減少につながるおそれがあります。最初に適切な種類（および量）のホース断熱材を選定することで、半導体ファブ環境で見られる結露などの問題が発生する可能性を低減することができます。

建設開始時に高品質な部品および優れた設計のシステムを選定しておくと、MRO業務を容易にかつ短時間で行うことができます。また、時間が経つにつれて必要になる部品や組み立て品の交換回数も少なく抑えることができます。コストの削減やダウンタイム（停止時間）の短縮を実現することで、長期にわたって高い生産性および収益性を維持することができます。

#4. 品質の世界標準化を行う

半導体ファブのオーナーは、複数のグローバル拠点間で、規格やプロセスを統一する方法について検討することをお勧めします。それによって生産性を高め、品質要件を維持することが可能になるためです。

すべての施設にわたって流体システムの部品や組み立て品を標準化することで、大きな利点が得られます。システムに一貫性があると、メンテナンスの簡易化、取り付け技術の統一化、製造業務の全体的な安全性の確保につながるためです。地域の法規制上の要求事項を順守しつつ、スケジュールを守るには、仕様が世界中で統一されている製品を提供し、ジャストインタイム物流を実践し、地域に密着した現場サポートを提供するサプライヤーが欠かせません。すべての施設でこうした業者と提携することで、効率化につながるのはもちろん、世界規模で収益性が飛躍的に高まる設計の選択につながります。

#5. 生産性および処理能力を向上させる

半導体ファブが稼働してオペレーションを開始した後は、安定した流れを維持し、パーティクルの剥離に強く、頻繁なシャットダウンが不要なシステムであれば、デバイスの歩留まりおよびファブのアップタイムの向上という直接的な効果が期待できます。信頼性の高い製造を行うことができれば、半導体メーカーはこの競争の激しい業界で優位に立ち、その立場を維持することが可能になります。

今日の半導体ファブでは、たとえ0.5%でも歩留まりが低下すると、年間で数千万ドルもの損失を被ることになりかねません。流体システムの信頼性は最初から、ROI（投資利益率）を語る上で欠かせない重要な要素なのです。しかし、これまで見てきたように、ファブ全体で重要な役割を果たす流体システムには高品質の部品やサブアセンブリーを選定して調達することで、施設の耐用期間にわたって非常に多くの利点が得られ、総所有コストの削減につながる可能性があります。

わずかな変更であっても半導体ファブのコスト削減につながります

世界中で新しい半導体ファブが稼働を開始しており、各地域において、国内生産力を拡大しなければならないという地政学的な重圧がのしかかっています。そこで、設計における選択のひとつひとつが重要な意味を持つことになります。高品質な流体システムは、もはや信頼性を発揮する設備であるだけでなく、競争力や資本利益率を高めるための戦略的手段でもあるのです。

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