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精製所において高粘度流体のサンプリングを安全に行うには

精製所において高粘度流体のサンプリングを安全に行うには

Matt Dixon

現代の精製所では、生産プロセス全体から最大限の価値を生み出すことが求められています。そのためには、精製プロセスから生じるすべての製品および副産物を最適化する必要があります。

ビチューメンは、こういった副産物のひとつで、従来の 原油 の蒸留プロセスで生じる高密度の高分子液体です。凝集体と混ぜ合わせてアスファルトとして販売され、建設業界では道路、滑走路、駐車場、屋根材などに使用されています。大半の精製所では、ビチューメンの価値を最大化する機会が存在します。マッキンゼーによれば、ビチューメンまたはアスファルトは、精製所の主要生産物に加えて利益を生み出すことができます。「精製所においてアスファルトを製造することで得られる価値とは、製品の価値の高さというよりは、原料のコストの低さによるものです」とマッキンゼーのコンサルタントは述べています。「アスファルトを生産している精製所がごく一部に限られているのは、最終市場が比較的小さいからで、一般的にアスファルトは特殊製品と考えられています」

他の石油精製品と同様、ビチューメンの価値をうまく引き出すには、サンプリングを継続的に行うことで、品質や一貫性を維持することが求められます。しかし、ビチューメンのような高粘度の流体のサンプリング(一般的にグラブ・サンプリングを介して実施)は、従来の方法とは異なっており、行うのは容易ではありません。今回は、ビチューメンをはじめとする高粘度の流体や液体のサンプリングを行う際に考慮すべきポイントを紹介します。

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コストがかさむ詰まりを防止する

高粘度液体は、適切な温度(通常は注入温度よりも20°C以上高い温度)を維持しなかった場合、凝固する傾向があります。つまり、高粘度流体のサンプリング・システムは、適切な加熱設計により高粘度流体の流れを維持し、システム内での凝固や詰まりを防止する必要があります。詰まりを解消するには、配管内部をクリーニングする必要がありますが、これは手間がかかる上に危険な作業でもあり、ダウンタイム(停止時間)が生じるおそれがあります。

サンプリング装置全体(配管から容器へのサンプリング・ポイントまで)にわたって適切な温度を維持することが重要です。サンプリング・システムの設計を簡素化することで、適切な温度を維持することが容易になります。例えば、システム内でのチューブの曲げ個所や使用する部品の数を最小限に抑えましょう。また、蒸気を使用してシステム流体をサンプリング・ポイントまで高温に維持するスティンガー・ノズルを取り入れるとよいでしょう。

現場の声

ビチューメンのサンプリング・システムに関してお客さまをサポートする際、大きな問題のひとつに「詰まり」が挙げられます。システム流体が一度凝固すると、適切に流れる状態に戻すのは容易ではありません。システム流体をすべて再溶解する必要がある上、それに伴って発生するコールド・スポットを排除するのは非常に困難な場合があります。大抵の場合、ビチューメンの配管が凝固すると、機械やツールによる対処に頼らざるを得ないことも多く、当然ながらコストがかさむことになります。まず、その作業を行うのに必要なダウンタイム(停止時間)が生じます。次に、ビチューメンを流す配管には通常1 インチ・サイズの チューブ を使用するため、小さいサイズの配管に比べると交換部品が高額になります。適切な予防措置を講じて詰まりを防止することが重要です。

ベルンハルト・モンテナリ
リージョナル・フィールド・エンジニア
スウェージロック・デュッセルドルフ

 

サンプルを安全に採取する

高粘度流体のサンプリングをうまく行うには熱が欠かせないため、サンプリング・プロセスを通じてオペレーターの安全を維持するべく特別な配慮が必要になります。ビチューメンは、一般的に204~260°Cの温度範囲で流れるため、誤って触れると重いやけどを負うおそれがあります。

こういった安全上の危険を軽減するには、次のような措置を講じてください。ひとつ目は、いわゆる「ノー・ボトル、ノー・フロー」機構をサンプリング・システムに組み込むことです。つまり、サンプルを採取するための適切な容器が設置されていることを感知した場合に限って、システム流体のサンプリングが行われるようにします。これによって、誤ってサンプリングを行うことはなくなります。サンプリングのミスが生じた場合、安全上の問題が生じるおそれがあるのはもちろん、後始末に苦労することにもなりかねません。また、適切な容器(一般的には金属製の耐熱容器)を使用することも重要です。

その他の安全対策としては、サンプリング・ポイントを囲むようにエンクロージャーを取り付けることで、容器への注入時における潜在的な飛沫からオペレーターを保護することができます。このようなエンクロージャーによって、蒸気加熱を行って適切な温度を維持し、詰まりを防止することも可能になります。

最後に、ビチューメンのサンプリング・システムの構成部品すべて(チューブ継手 や バルブ など)が、システム流体に要求される高温に適した定格を備えていることが重要です。サプライヤーと連携し、適切な定格を備えた部品を選定していることを確認してください。

サンプリングの専門スタッフと連携する

サンプリングは、高粘度アプリケーションであれ、それ以外のアプリケーションであれ、高品質の製品を確実に提供するためのプロセスにおいて、重要な役割を担っています。つまり、サンプリングを行うことで流体の組成を確認し、規制を順守し、全体的な収益性を維持することができるのです。

こうした理由から、重要なサンプリング・システムの構築や使用に関するアドバイスやベスト・プラクティスを提供可能なサプライヤーと協力することが有益です。スウェージロックの フィールド・エンジニア は、世界各地の精製所で働く方々向けに、サンプリングに関するコンサルテーションを行っています。高粘度流体のサンプリングや一般的な流体のサンプリングに関する問題にお悩みでしたら、フィールド・エンジニアにご相談ください。また、一般産業従事者向けに、サンプリング作業の改善に役立つリソースを多数用意しています。以下のボタンをクリックすると、サンプリングに関するさまざまなベスト・プラクティスをご覧いただけます。

私たちは長年にわたってお客さまと密接に連携し、ビチューメンなどのニッチな流体や高粘度液体に適した安全なサンプリング・システムを開発してきました。こういったサンプリング作業に携わる人にアドバイスを行うとすれば、「シンプル・イズ・ベスト」ということです。システムが複雑になればなるほど、問題が発生する可能性が高まるからです。
–ベルンハルト・モンテナリ

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