水素ぜい性に関する知識をいかに活用するか
適切な材料を選定することで、部品の疲労(繰り返しの荷重による鋼材の弱体化)を軽減することができます。
(+) 筆記録を見る
クレイグ・ギフォード:
「Ask Swagelok」へようこそ。本日は私クレイグ・ギフォードと、スウェージロック冶金上級研究員のバディ・ダムがお届けします。今回のテーマは「スウェージロックは水素ぜい性の知識をいかに利用しているか」です。
バディ・ダム:
とても良い質問です。まず言いたいのは、水素経済と市場は大きく進化しています。世界の国立研究所や大学、そして企業内でも研究開発が盛んに行われています。新たな情報が次々と明らかになる中、当社は最新情報を常に把握すべく努め、常にお客さまに寄り添い、水素関連のプロジェクトを数多く成功させ、そこから学び続けることを心がけています。
材料選定の際に用いている方法のひとつがいわゆる相対絞りです。大気中で材料に引張荷重を加えて破断させる試験を行うことで、材料の延性を絞りとして測定できます。この試験を水素環境で繰り返すと、絞りの値は低くなります。水素中と大気中での相対絞りの差は割合で表すことができます。
オーステナイト系ステンレス鋼は水素用途でよく使用される合金ですが、304ステンレス鋼を試験すると相対絞りは約50%です。市販の316Lステンレス鋼では約80%となります。当社が使用している316Lステンレス鋼は、合金の含有量を少し増やすことで90%の相対絞りを実現しています。
この他に重要なのが溶接です。多くのお客さまが溶接でチューブを接続したり部品に取り付けたりしていることから、溶接部の性能を把握する必要があります。水素中で溶接部を試験したところ、相対絞りは約85%で、90%と比べても遜色ない良い数値です。
また加工硬化にも注意が必要です。当社では316ステンレス鋼に加工硬化(冷間加工)を施して強度を高めているため、さらに高い圧力を封入することができます。水素の封入圧力は約70 MPaにもなります。冷間加工した製品を試験したところ、相対絞りは90%に対して85%と遜色ない良い数値です。
当然ながら実際の部品では破断するほどの荷重が加わる設計はしません。しかし外部から周期的な圧力サイクルを受けると、荷重による疲労損傷蓄積が生じます。そのため、「水素が疲労に与える影響」を理解することが重要です。
304ステンレス鋼を試験し、大気中と水素中での性能を比較すると、疲労寿命が約90%短くなります。316Lや合金含有率を少し上げた316Lの試験では、疲労寿命が約70%短くなります。それでもまだ顕著です。大きな違いですね。
応力を抑制するために適切な設計を行うことで改善することが可能です。例えば、適度に応力を低減すれば疲労寿命を10倍にできます。これで状況が大きく変わります。
クレイグ・ギフォード:
素晴らしいですね。ありがとう、バディ。ご視聴ありがとうございました。