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水素燃料電池自動車向けに最適なコンポーネントを選定するには

水素供給ステーション

水素燃料電池自動車向けに最適なコンポーネントを選定するには

Chuck Hayes、主席エンジニア

水素モビリティとそのインフラを実現するべく、世界各地では大規模な投資が行われています。

これは、さらなる効率化と排出ガス削減を目指す自動車メーカーにとって、水素燃料電池技術がますます魅力を増しているためです。燃料電池で水素ガスと酸素を化学反応させて電気を作り出し、モーターを動かすことで走行する 水素燃料電池自動車 (以下水素自動車)は、有毒な排気ガスが出ない上、大型自動車に必要な馬力およびトルクを備えています。

水素燃料電池技術は有望視されており、その市場は急速に拡大しつつあります。政府や業界のリーダーは、水素燃料電池を導入するにあたっての課題に取り組みつつ、水素輸送の支援と開発に投資を行っています。コンポーネントの観点から、スウェージロックは車両自体において、そして大規模導入に向けて急成長するインフラの一部として、水素燃料電池技術が持つ可能性を最大限に引き出すべく、適切なソリューションの提供に取り組んでいます。

自動車やインフラのオペレーションの信頼性を高めるには、水素用コンポーネントを選定する際に熟考を重ねることが必要です。今回は、その際の注意点を紹介します:

材料選定の重要性: 腐食の制御は、チューブ継手を使用するアプリケーションでは重要ですが、水素の貯蔵には特有の課題があります。水素ぜい性は316ステンレス鋼、つまり水素自動車のアーキテクチャで一般的に使用されている部品(継手、バルブ、チューブなど)に広く使用されている合金に影響を与える可能性があります。

水素ぜい性は、一部では水素が微細な分子で構成されていることから発生すると考えられています。つまり、水素の分子が非常に小さいため、材料の立方格子ネットワークの壁に侵入して分子結合を切断することで、材料に不具合が生じるのです。実際には、水素ぜい性が発生すると、ステンレス鋼のグレードによっては、鋳鉄のように非常に脆く、割れが生じやすくなることが確認されています。

そのため、水素インフラを設計する際は、ステンレス鋼の組成に十分注意する必要があります。クロムとニッケルの含有量を増やすと延性および耐食性が高まるため、水素ぜい性を防止することができます。米国試験材料協会(ASTM)は、316ステンレス鋼のニッケル含有量として10%以上を要求していますが、水素特有の課題に対処するには、12%以上のニッケルを含有する高品質の316ステンレス鋼が適しています。なお、スウェージロックが使用しているステンレス鋼は、12%以上のニッケルを含有しています。

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圧力下での性能: どのような流体システムにおいても、漏れの防止は重要です。しかし、水素自動車やそのインフラのアプリケーションにおいて接続用コンポーネントのタイプを選定する際には、特に考慮すべき事項があります。

第一に、水素ガスは高圧で圧縮して貯蔵します。つまり圧力が高いほど圧縮水素の貯蔵量が増えるため、航続距離が長くなるということです。現在の水素自動車は、アプリケーションのニーズに応じて、35 MPaまたは70 MPaの圧力で水素ガスを貯蔵しています。例えば、短距離走行を主とする法人車両の大半は、35 MPaを採用しています。このような車両は、毎日のように拠点に戻って水素を補給することが可能なためです。一方でトラックのような車両の場合は、70 MPaを採用することで、長距離走行が可能になります。メーカーは、1,000 kmの航続距離を目指しています。圧力を高くするのであれば、従来のオプションでは対応できず、より高性能なコンポーネントが必要となります。

耐振性も重要です。一般産業用途においても重要なのは変わりませんが、水素アプリケーション用の継手や接続用コンポーネントは、走行車両に付き物の絶え間ない振動にも耐えられることが求められます。例えば、コーン&スレッド継手は、手作業で作られています。また、チューブの前処理の質も施工者によって差がありますが、水素の場合は些細なミスも許されません。水素ガスの微細な分子は非常に小さなすき間からでも漏れ出し、ほんのわずかな漏れ量であっても取り返しのつかない事態を引き起こすおそれがあります。適切な性能を得るには、 Swagelok FKシリーズ継手 が採用しているような、高度かつ一貫した技術が求められます。

アプリケーションの仕様に適したコンポーネント: 水素輸送のあらゆる領域において、設計とコンポーネントの要件は車両ごとに異なります。ここで水素燃料電池を多く利用している路線バスを例に取り上げてみましょう。屋根の上に貯蔵タンクを搭載しているバスのアーキテクチャには、長距離走行車には無い特有の柔軟性が求められます。そこで硬い炭素鋼チューブの代わりに35 MPaに対応可能な信頼性の高いホースを採用することで、柔軟性が生まれます。

つまり、正しい基準を満たしたホースを選定することが重要となります。水素アプリケーション用のチューブや継手に使用する316ステンレス鋼は、配合を考慮する必要がありますが、それと同じ理由から、金属製オーバーブレード付きのポリマー製コア・ホースは、水素バスには適していません。設計時には、ホースを選定する際も同様の考慮を行い、特定のアプリケーションに適した高品質の材料から作られた製品を選定しましょう。

強力なサポート:水素輸送が持つ可能性を最大限に引き出すには、設計者やメーカーは、水素分野での幅広い専門知識を持つ部品サプライヤーと協力することをお勧めします。

スウェージロックは創業以来、水素を含むさまざまなガス・システムの取り組みに携わっています。コンポーネント性能および材料科学における卓越した専門知識と、的確かつグローバルなサービスとサポートで、水素輸送分野のメーカーの皆さまが新たな成功のチャンスをつかむお手伝いをいたします。

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