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状態図の蒸気圧曲線を活用する

状態図の蒸気圧曲線を活用する

2019年5月15日 | Karim Mahraz、製品マネージャー、分析計装担当

主に化学者が実験の際に活用している「状態図」が、サンプル分析を業務とするエンジニアやプラント・マネージャーにとってもかなり便利なツールになり得ることをご存知でしょうか。 分析システムによっては、液体サンプルを気化させてガスに相変化してからでないと分析することはできません。 基本的に気化は、温度、圧力、流量の微妙なバランスの上に成り立っています。状態図の蒸気圧曲線を使うことで、特定の材料や混合物の相変化を見極めることができます。

それではここで、ヘキサンを20%含有したペンタンの混合ガスの状態図を例として見てみましょう(下の図を参照)。 サンプルが沸点ライン(青い曲線)より上の領域では、このサンプルはすべて液相になります。 気化器に流入する時点のサンプルは、液相が保たれている必要があります。 このサンプルが露点ライン(オレンジ色の曲線)より下にあると、すべて気体(ガス)になります。 気化器から排出される時点のサンプルは、すべてガスである必要があります。


vaporizer body temperature graph

 

沸点の曲線と露点の曲線の間は、いわゆる「立入禁止区域」となります。 この領域は、サンプルの「気液混合相」と呼ばれます。 この範囲では、液相と気相の2つが混在しています。 サンプルがこの「立入禁止区域」に陥ると分別気化が発生し、分析に使用することはできなくなります。 気化は、温度、流量、圧力を適切に設定し、立入禁止区域の液体側からガス側へと、サンプルを一瞬で移行させることを目的としています。 純度100%またはそれに近いサンプルは、この気液混合相(立入禁止区域)が限りなく狭く、沸点と露点の線は単純に重なっているか、ほぼ一致しています。

純度100%またはそれに近いサンプルは、蒸発・気化いずれの場合でも、成分を維持したままガスに相変化します。工業用のサンプルには純度100%に近いものがありますが、このようなサンプルは極めて容易に変換できます。 一方、サンプルによっては気液混合相(立入禁止区域)が広く、うまく気化できないものもあります。 気液混合相の広いサンプルは、立入禁止区域の液体側からガス側に移行することが難しく、各種条件を調整しても分別気化の発生は避けられません。

例えば上の状態図では、沸点と露点の幅はそれほど広くありません。よって適切に設定すれば、立入禁止区域の液体側からガス側にサンプルを効率的に移行させることは十分可能です。 ただ、限りなく狭いというほどでもないため、設定は慎重に行ってください。

温度、圧力、流量を設定する

引き続き、状態図のサンプル[ペンタン(ヘキサン20%含有)]を見ていきましょう。このサンプルを適切に気化させるには、各パラメーターをきちんと設定する必要があります。一般的には、一次側では圧力を上げて温度を下げ、逆に二次側では圧力を下げて温度を上げることが必要になります。 ただし、これらのパラメーターの許容値には上限と下限があり、すべてコントロールできるわけではない点に注意してください。

1. 気化器の一次側圧力を決定する
一次側圧力を決定する一次側圧力は固定で、プロセスの圧力となります。ただしこれは、気化器をサンプル取出し口の近くに設置している場合に限ります。 上の状態図では、この圧力は4 barです。 この圧力が高ければ、気化器は流入する液体を沸騰させることなく、高温を維持することができます。


2.
気化器の温度を設定する
温度設定には2つの目的があります。 1つ目の目的は、温度を十分に低くして、気化器に入ったサンプルを完全な液体の状態に維持することです。 上の状態図では、4 barの圧力下での沸点は88℃です。 分別気化の発生を避けるには、88℃に対して十分な幅を持たせた切りの良い数字を選択して、立入禁止区域に陥らないようにするのがベストでしょう。 余裕を見て80℃としてはどうでしょうか。

つ目の目的は、温度を上げてサンプル全体を急速に気化させ、気化器からガスだけを排出することです。 サンプルが気化する際、エネルギー保存の法則に従ってサンプルの温度が下がります。 このため、圧力が下がってもサンプルが立入禁止区域に陥らない程度に温度を高くする必要があります。 上の状態図では、圧力降下後のガスの温度は60℃で、露点の曲線のかなり近いところの気相側になります。

3. 二次側圧力を設定する
二次側圧力を設定する目的は、減圧することで露点を表すオレンジ色の曲線を下回るようにすることです。 上の状態図では、二次側圧力が1.5 barに設定されていますが、この値よりも二次側圧力が高くなると、サンプル全体が気化されず分別気化が発生します。

4. 流量を設定する 
流量は、気化器ではなく二次側のバルブと流量計で設定します。 サンプリング・システムでは、流量を多くするとサンプルが分析器に移動する時間を短縮することができますが、一方で問題もあります。サンプルを気化させるためには、より多くの熱が必要になります。 言い換えると、流量が増えるほど気化時の温度降下が大きくなるということです。 上の状態図では、紫色の直線が温度降下を示しています。 流量が増えると、一気に温度が下がります。

 

温度降下に影響するもう1つの要因に、気化器の熱伝達性能があります。 気化器の中には、サンプルへの熱伝達効率が特に優れているものがあります。 液体サンプルが気化するとサンプルの温度が下がり、周囲のステンレス鋼から熱を奪います。 ここで重要なのは、気化器がいかに効率的に奪われた熱を加熱で補い、サンプルの温度を維持することができるかです。 気化器の加熱機能が優れていれば、サンプルが奪われる熱量が多くても、気化中の温度降下は抑えることができます。 場合によっては、気化器の外側に触れると熱を感じるにもかかわらず、内側の中心部が冷え切っていることがあります。 これは、気化したサンプルが大量の熱を奪っているのに対して、気化器が十分なエネルギーを供給できず、温度を維持できていないことを意味します。 この場合は、流量を減らすことが最善策となります。

ここまでの内容をまとめると、上の状態図に見られる温度降下は、流量そして気化器の熱伝達性能によって発生しているということになります。 高性能の気化器を使用して流量を下げると、上の状態図の紫色の直線はより垂直に近くなります。 残念ながら、状態図内の温度降下の正確な位置を簡単に算出する方法はなく、既存のソフトウェア・プログラムを使用してもこの位置を割り出すことはできません。 そのため、気化ではある程度の概算に頼らざるをえません。 基本的には、流量をできる限り抑えつつ、サンプルが分析器に到達するまでに発生する時間遅れを許容範囲内に収めるように努めてください。 また、最初から大流量にするのではなく、低流量から徐々に流量を増やしていくことをお勧めします。

状態図の蒸気圧曲線を分析計装およびサンプリング・システムで活用する方法についてさらに詳しく知りたい場合は、最寄りのスウェージロック指定販売会社にお問い合わせください。

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