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円周溶接トレーニング: 次世代を受け継ぐ溶接工の育成に向けて

円周溶接トレーニング: 次世代を受け継ぐ溶接工の育成に向けて

2019年2月13日 | Jason Miller、溶接担当

熟練溶接工の確保はますます難しくなっており、この傾向は今後さらに加速する見通しです。 米国溶接協会(AWS) によれば、米国の現役溶接工の平均年齢は55歳で、半数以上が退職間近であり、2020年までに291,000人もの溶接工が不足するとも言われています。

この人手不足を補う方法のひとつが、少ない人員でより多くの作業をこなせる自動溶接システムです。 1960年代に登場した自動円周ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)は現在、最高レベルの漏れ防止性、高い性能、超高純度を必要とする業界で幅広く活用されています。 自動円周溶接システムによって、制御性と再現性に優れた高品質な溶接を行うことが可能になりました。 ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)は入熱量を正確に制御できるため、薄い金属を接合したり、熱に弱い部品の近くで溶接したりする場合に適しています。

ただし自動円周溶接を導入したからといって、高い知識と技術を身につけた溶接工がお払い箱になるわけではありません。 自動溶接機が溶接工の技能に取って代わることは決してありません。 むしろ溶接の自動化によってトレーニングの必要性は減るどころか増えることになります。 現在も溶接オペレーターは、材料の成分、冶金学、各種セットアップ、パージ・ガス、シールド・ガス、電力と電圧、溶融池の動態、電極のサイズ、チップの形状など、溶接に関するあらゆる基本知識を習得することが求められます。 それに加えて、自動溶接システムの操作、入力データによる反応の違い、材料サプライヤーから取り寄せるべき文書などについても理解しておく必要があります。

円周溶接トレーニングに関する注意点

自動ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)機のオペレーターを対象としたトレーニング・プログラム は、数多く実施されています。 中にはわずか2日で修了できるものもあれば、1週間かけて行われるプログラムもあります。 長期間にわたるトレーニング・プログラムを受講すると業務に支障が出るという懸念があるかもしれませんが、長い目で見ればそれは一時的なデメリットにすぎません。

トレーニング・プログラムを選定する際は、専門的な技術を詳細に学べるか、ハンズオン形式の実習機会があるかをチェックしてください。 トレーニング教材を検証して質を評価し、受講者のニーズに合致しているか確認することをお勧めします。 例えば、成分が異なる2種類の金属材料を溶接するケースを取り上げているか否かで、円周溶接トレーニング・プログラムの質を判断することができます。

講師の知識レベルも、トレーニング・プログラムの内容と同じくらい重要です。 認定を取得している講師が担当するトレーニング・プログラムを探しましょう。 たった1カ所でも溶接に不具合があればシステムに悪影響を及ぼすばかりか、トレーニング・プログラムの受講料を超えるコストの発生にも繋がりかねません。

自動溶接は、毎回の溶接サイクルで正確かつ再現可能な溶接電流レベルを維持するのを目的としています。 優れたトレーニング・プログラムであれば、作業原理、メリット、制約事項、問題、可変要素などを踏まえた円周溶接技術の工程を学ぶことができます。 トレーニング受講者が溶接機を使いこなせるようになるには、実習が欠かせません。また、講師は、パワー・サプライに関する深い知識が求められるのは言うまでもありません。

円周溶接工程で使用するガスを理解する

1. シールド・ガス

円周溶接トレーニング・プログラムを評価する際は、シールド・ガスやパージの重要性にどれくらいの説明を割いているかをチェックしましょう。 シールド・ガスが大気中のコンタミネーションから電極や溶融溶接金属を保護するしくみは、必ず理解しておく必要があります。 ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)のシールドには、アルゴン、ヘリウム、アルゴンとヘリウムの混合ガスがよく使用されています。混合ガスは、特殊用途に使用するのが一般的です。

溶接を行う上で、ヘリウムとアルゴンの最適な割合は重要なポイントになります。 シールド効果に最も影響する要因は、ガスの密度です。 アルゴンは、空気の1.33倍の密度があり、溶接部を確実に覆って大気を遮断します。 密度が低いヘリウムは、溶接部に流れ込まずに上昇する傾向があるため、同等のシールドを行うには、ヘリウムの流量をアルゴンの2~3倍にする必要があります。

材料によっては、冶金学的特性がシールド・ガスの影響を受ける場合があります。 一般的には、シールド・ガスにアルゴンを使用すると、その他のガスに比べて穏やかで安定したアークが発生します。 また、単価を抑えられるほか、流量の要件も低いことから、現在はアルゴンを使用するのが主流となっています。 適切なシールド・ガスを選択するのに必要な知識は、絶対に欠かせません。

2. ガスによるパージ

円周溶接作業がうまくいくか否かは、適切なガス・パージ技法を使えるかに大きく左右されます。 熟練の溶接工でも、この重要性を理解していない人は少なくありません。 中には、ガスによるパージに懸念を示す人もいます。 トレーニング・プログラムでは、パージの原理(パージ時間の算出方法など)を教えることが必要でしょう。

パージの品質は、適切なパージ・ガス(一般的にはアルゴン)を選定できるか否かにかかっているといっても過言ではありません。 アルゴンにはさまざまな純度があるため、希望する溶接結果を得るには適切な純度レベルを選択する必要があります。 チューブやパイプ、あるいは溶接接合部全体で適切な流量と圧力を判断・設定することは、溶接を行う上で重要なポイントになります。 逆に、ここで誤ると、かなりの確率で問題が発生することになります。 ガスによるパージが不適切であったり、まったく行わなかったりすると、製造システム全体に壊滅的な影響が出るおそれもあります。 内部圧力は溶接部内面に影響するため、適切な流量を維持することで溶接金属と熱影響部が清浄な状態に維持されます。

溶接に適した高品質な材料を選定する

溶接の品質は、材料次第です。 最高の円周溶接システムであっても、使用するチューブや継手の材質が粗悪であれば、適切な溶接を行うことはできません。 材料に関する実践的なトレーニングでは、成分や冶金に関する問題(硫黄含有量が溶接の品質に影響するしくみなど)を学ぶことができます。

材料は、大別すると軟鋼、ニッケル合金、耐熱金属と活性金属、ステンレス鋼の4つに分けることができます。 円周溶接トレーニング・プログラムを通じて、実際に使用することになる材料をすべて検査し、材料証明書に目を通し、文書の内容を評価できる能力を身につけましょう。

1. 軟鋼

軟鋼を使用する場合、円周溶接の質は、母材に含まれる不純物(微量の硫黄、リン、酸素など)の含有量に大きく左右される点を覚えておきましょう。また、炭化水素や水蒸気などのコンタミネーションが存在すると、水素ぜい化が生じるおそれがあります。

2. ニッケル合金

ニッケル合金は材料特性が優れており、腐食性が非常に強い用途に適しています。その一方で、そのクラッキング感受性によって溶接の難易度が高まる場合があります。

3. 耐熱金属と活性金属

耐熱金属と活性金属のチューブとパイプを接合する際は、円周溶接が最も一般的に使われています。 耐熱金属(モリブデン、タンタルなど)と活性金属(チタン、ジルコニウムなど)は、温度が上昇すると容易に酸化するため、不活性ガスで覆って保護する必要があります。 こうした金属および合金の場合にも、ガス・タングステン・アーク溶接(GTAW)は、熱集中性に優れており、入熱量をしっかりと制御して、あらゆるアーク溶接工程に最適な不活性ガスによるシールドを行います。

4. ステンレス鋼

クロムを10.5%以上含むステンレス鋼は、耐食性に優れています。これは、酸化層が瞬時に形成されて、ステンレス鋼内部のその他の成分を保護するためです。 これらの成分が構成するミクロ組織の違いにより、ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、さらに、これら2つの相がバランスよくミックスされた2相ステンレス鋼に分類されます。 大半のステンレス鋼は溶接可能とされていますが、溶接する際はミクロ組織の違いに留意する必要があります。

硫黄含有量

円周溶接に影響を与える主な要因としてもうひとつ、材料の硫黄含有量が挙げられます。 硫黄は、機械加工や成形を容易にする目的で材料に添加されます。 硫黄の含有レベルに応じて溶接部の表面張力が変化し、材料の熱流動特性と溶け込み特性に影響を与えます。 円周溶接のトレーニングでは、溶接する部品に含まれる硫黄量が鍵を握っていることを教える必要があります。 溶接する部品の硫黄含有量に大きな差があると、含有量が少ない部品にビードが偏る現象が発生し、接合部から溶接ビードがずれてしまうおそれがあります。

正しい知識を身に付ける

溶接工不足の問題はますます深刻化しており、世界各地の製造業界の未来にも影を落としています。 少ない人員でより多くの作業をこなす自動円周溶接は、作業、機器、スキルセットの種類によっては、この問題の解決策になりえます。 円周溶接システムによって機械で溶接できればトレーニングは不要になるという見方がありますが、これは誤解です。 むしろ逆に、トレーニングを通して最先端の知識を豊富に身につけることが、溶接工にとっては今まで以上に重要になるのです。 溶接オペレーターが現在の溶接業界の厳しい判定基準を満たすには、単に接合して溶接する以上の複雑なスキルを習得することが必要です。そのためには、認定講師による質の高いトレーニングを受講するのが最善策と言えるでしょう。

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