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プロセス分析システムの分析器を校正する方法

分析計装システムの分析器を校正する方法

2019年1月15日 | Tony Waters、サンプリング・システム専門家/トレーニング講師

分析計装システムでは、大抵の場合、プロセス分析器によって得られるのは絶対測定値ではなく、校正時の設定に基づく相対的な応答値になります。つまり校正とは、深刻なエラーにつながりかねない、非常に重要なプロセスなのです。 プロセス分析器 の校正では、含有成分と濃度があらかじめわかっている校正用流体を分析器に通し、その濃度を測定します。 校正用流体の濃度と測定値が一致しなかった場合、その結果に従ってプロセス分析器を調整します。 後にプロセス・サンプルの分析を行う際、分析器による測定値の精度は、校正プロセス時の精度に左右されるためです。

校正時のエラーやコンタミネーションの発生メカニズム、プロセス分析器が検知した性能上の問題は校正で修正可能か否か、大気の圧力や温度の変動が校正成果に与える影響、校正に適したタイミングなど、校正について理解しておくべきことはいくらでもあります。

システム設計

校正によく見られる問題に、システム設計の選択ミスが挙げられます。 校正用流体を流路選択バルブ・システムの二次側で注入するケースは少なくありませんが、これではダブル・ブロック/ブリード(DBB)・バルブを使用する意味がありません(図1参照)。理想的な校正用流体の注入場所は、校正用流体がサンプル流路選択システムを通過する位置です(図2参照)。 サンプル流路選択システムは、クロス・コンタミを生じさせることなく、サンプル流路を迅速に切り替えることができます。 図1と図2では、サンプル流路選択システムのそれぞれのサンプル流路に、ブロック・バルブ2個とブリード・バルブ1個を取り付けることで、分析器に向かう流路が常に1つだけになるように設計されています。

流路選択システムはここ数年で、従来型のコンポーネントからなるDBB構成から、 モジュラー化/小型化したシステム へと進化しました。 効率的なシステムは、パージ時間が短く、バルブの作動圧力が低く、安全特性も向上しています。さらに大流量で、流路間の圧力損失が同じなため、分析器までの到達時間を予測することが可能です。

流路選択システムでは、校正用流体がサンプル流路へ漏れ出すことはありません。 にもかかわらず、この流路選択システムをバイパスし、校正用流体のラインを分析器に近付けて流体の量を節約しようとしているケースが見られます。 図1のように、ボール・バルブを1つしか使用していない場合は、校正用ガスを節約するどころか、分析器の測定値がかさ上げされることにつながりかねません。 分析器を正しく校正したとしても、微量の校正用ガスがサンプル流路に漏れ出し、測定値が無意味なものになる可能性が常につきまとうことになります。

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図1: 校正用ガスが流路選択システムの二次側で注入される構成。DBBアセンブリーを使用する意味がない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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図2:注入した校正用ガスがサンプル流路選択システムを通過する理想的な構成。DBBアセンブリーがコンタミネーションを防止している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アプリケーションによっては、 アメリカ合衆国環境保護庁(EPA) の要求事項に基づき、校正用流体をサンプリング・システムの上流側(通常はプローブ付近)で注入する場合があります。 これは、サンプル流路と同じ条件で校正用流体を流す必要があるためです。 これで、サンプルがプローブから分析器に到達するまでにかかる合計時間を適切に推計することができるというメリットもあります。 一般的に、この経過時間を短く見たり、無視したりするケースは少なくありません。

ただ、校正用流体をサンプリング・システム全体に流すとなると、かなりの量の流体が必要になります。 というわけで、このオプションはあまり現実的とはいえません。 そこで、校正用流体を流路選択システムの流路の1つに流すことをおすすめします。 この構成であれば、サンプル流路によるコンタミネーションが生じることなく、校正用流体が分析器に到達する可能性が高くなります。 使用していない間は、校正用流体によるサンプル流路のコンタミネーションを2個のブロック・バルブで防止します。 また、モジュラー・プラットフォーム・コンポーネント(MPC)であれば、必要な校正用流体の量を最小限に抑えることができます。

校正の限界

分析器を有効に校正するには、校正とは何か、校正で何が修正可能か否かを、オペレーター、技術者、エンジニアが理論的に理解しておく必要があります。

プロセス分析器は正確性が求められます。 校正用流体の測定結果も繰り返し性が良くなければなりません。 プロセス分析器の繰り返し性が良くなかった場合、分析器に不具合が生じているか、システムがサンプルの状態を一定に維持できていないことになります。 このような「不正確性」は、校正では修正することができません。

プロセス分析器の結果が一定であるにもかかわらず、校正用流体の既知の濃度と結果が一致しない場合は、分析器は正確でないと考えられます。 これは校正によって解消することができますし、校正によって解消する必要があります。 この作業は「バイアス調整」と呼ばれます。

ただ、校正用流体のテストを行ってみて、プロセス分析器の正確性にも精度にも問題が見られなかったとしても、サンプル流路の分析結果が不正確な場合もあります。 例えば、赤い分子をカウントするよう設定した分析器が、ピンクの分子を検出したとします。 この場合、分析器がピンクの分子を赤い分子と判定してカウントすれば、赤の分子が過剰にカウントされることになります。 これは「プラス干渉」と呼ばれる現象です。 例えば、プロパン分子をカウントするよう設定したプロセス分析器に、プロピレンが出現したとします。 この分析器が両者を区別する構成になっていなければ、プロピレンがプロパンとしてカウントされるおそれがあります。

完全無欠なプロセス分析器は存在しませんが、プロセス分析計には、選択機能が組み込まれています。プロセス分析計の中には複雑で、特定の種類の干渉を化学的に抑制する機能があるものもあります。 例えば、全有機炭素(TOC)分析器は、排水中の炭素含有量を測定し、炭化水素が不適切に廃棄されていないかを判定します。 この判定を正確に行うため、このプロセス分析器ではプラス干渉の原因(硬水に含まれる石灰などの無機炭素)を排除していますが、この手順を最初に実施しておかなければ、炭化水素と硬水を混同し、有機炭素と無機炭素の両方を測定してしまうことになりかねません。

干渉にはもう1つ、カウントされるべき分子が別の分子に阻止されてカウントされないという「マイナス干渉」と呼ばれる現象があります。 例えば、フッ化物を添加した飲料水は電極を使ってフッ化物の含有量を分析しますが、 飲料水に通常含まれる水素イオンにフッ化物が阻止され、誤って少なくカウントされてしまいます。 これにより、分析器の測定値では標準的な分量の1 ppmだとしても、実際の含有量が10 ppmだったという可能性もあり得ます。 これを解決するには、干渉の原因を排除するしかありません。 具体的には、緩衝液を注入して水素イオンを除去すれば、電極がフッ化物を正確に測定できるようにします。

望ましい結果をプロセス分析器から得るまでには、さまざまな障害が待ち受けています。しかし、プラス干渉とマイナス干渉、そして正確性と精度について理解することで、解決の糸口をつかむことができるはずです。 プロセス分析器の結果が想定と違っていても、校正すれば万事解決と考えてしまうかもしれませんが、これまでに述べたように、校正には限界があり、すべての問題を校正で解決できるわけではありません。

大気を原因とするガス分析器の変化を制御する

ガス分析器は、基本的には分子カウンターです。 ガス分析器の校正では、既知の濃度のガスを注入してプロセス分析器の出力を確認し、適切にカウントされていることを確認します。 しかし気候によっては、大気圧が5~10%変化する可能性があります。 このような状況では、一定の容積に含まれる分子の数が大気圧の変化によって変動し、分析器による最終的なカウント数までが変わってしまいます。

大気圧が14.7 psia(絶対圧力で1 bar)で一定しているというのはよくある誤解で、実際は天候によって1 psi(0.07 bar)程度は増減します。 校正プロセスを効率良く行うには、サンプリング・システムの校正中およびサンプル分析中の絶対圧力を一致させる必要があります。 絶対圧力は、絶対真空からの圧力の合計と定義します。 これをサンプリング・システムに当てはめると、圧力計で計測したシステム圧力と大気圧を合計した圧力になります。

それでは、このように非常に重要な圧力は、どのように制御すればよいのでしょうか。 一部のプロセス分析器(赤外線分析器や紫外線分析器など)では、大気圧の影響を受けた測定値を、後で電子的に修正することができますが、 大半のプロセス分析器(ガス・クロマトグラフを含む)では、大気圧の変動を修正することができません 。 実際、圧力変動を修正できるシステムはほとんどなく、大半のシステム・エンジニアやオペレーターは、そこを看過しています。 大気の変動など大したことはないと考える方もいれば、大気による変動は、プロセス分析器に影響するその他の変動要因と相殺されると主張する方もいます。 しかし実際には、大気圧の変動が大きな影響をもたらす可能性はあります。 例えばプロセス分析器の校正時の大気圧がX、プロセス・ガス注入時の大気圧がX + 1 psi(0.07 bar)だとすると、測定値が正確な値から7%もずれることになります。

さまざまな環境規制により、現在はほとんどのプロセス分析システムでフレアー・スタックなどのリターン・ポイントへの排出が行われていますが、 こうした排出先を原因とする圧力の変動は、分析器の一次側の圧力に影響を与えることになります。このため、このような変動を制御するため、エダクターやレギュレーターを搭載したベント・システムが存在します。 しかし残念ながら、このようなシステムで使用しているレギュレーターは大気と接触しているため、ベントによる変動は制御できても、大気圧の変動を制御することはできません。

このようなシステムで、大気による圧力変動とベントによる圧力変動を制御するには、絶対圧力レギュレーターが必要です。絶対圧力レギュレーターが通常のレギュレーターと異なるのは、システム内部の圧力を比較する対象が、天候の影響で常に変動しているシステム外部の圧力ではなく、絶対に(あるいはほんのわずかしか)変動しない不変の設定圧力であるという点です。 大抵の場合、この設定圧力には0 psia(絶対圧力で0 bar)が使われます。

バリデーションと校正の違い

理想的な校正方法は、統計的解釈を用いたバリデーションを自動システムによって定期的に実行することです。 「バリデーション」とは、分析器による測定が目標値から外れてないかどうかを定期的にチェックするプロセスを指します。 バリデーションでは、取得した測定値を記録します。 このプロセスは、調整を行わないという点を除いて、校正のプロセスと同じです。

自動化システムでは、バリデーション・チェックを定期的に実行し(通常は1日1回)、結果を分析して、調整や再校正が必要な問題があるか判定します。 このシステムでは、ある程度の避けられない偏差は許容されますが、測定値にある特定のドリフト(時間の経過と共に修復しない)が連続して認められれば、システム異常の可能性を警告します。

自動化システムの代わりに、手作業でシステムのバリデーションを定期的に実施することは可能ですが、大抵の場合はバリデーション担当者が分析器の調整も行うことになります(たとえシステムの偏差がわずか1%であっても)。 つまり軽微な調整が不定期に何度も加えられることで、これ自体が1つの影響要因となり、傾向を分析したり、どのような場合にシステムの挙動が変わるのかを判断したりすることが、かえって難しくなります。 このため、担当者不在で運用できる自動化システムを使い、結果の統計的分析によって注意喚起が行われたときにのみ担当者が確認するやり方をお勧めします。

最後に

校正は、分析システムには欠かせない重要なプロセスですが、実施する際は注意が必要です。 オペレーター、技術者、エンジニアは、校正用ガスの適切な注入方法や、ガス分析器における大気の変動を制御する方法を理解することが求められます。 さらに技術者とオペレーターは、校正には限界(解決できる問題とできない問題)があることや、1回の校正結果に基づく調整を何回行うとエラーが生じるかを把握しておく必要があります。 自動化システムを使ってプロセス分析器の定期的なバリデーションを実施し、統計的分析が要求した場合に適切な校正を行うことで、校正の本来の効果を引き出すことができ、分析器から正確な測定値を得られるようになるのです。

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